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断捨離/日常/生活リズム/ミニマリスト/シンプルライフ/ペン字/美容/料理/手帖/ドラマ/… 交際4年目、同棲2年目 クリエイター業をしています*

読書感想文『アネモネの姉妹リコリスの兄弟』-ツリフネソウの姉弟-

アネモネの姉妹 リコリスの兄弟 | 古内 一絵 | Kindle本 | Kindleストア | Amazon

 

最近読んだ本『アネモネの姉妹リコリスの兄弟』
こちらは古内一絵さんの書く花言葉にまつわる短編集です。

今回はその中から「ツリフネソウの姉弟」の感想、思ったことなどを書こうと思います。

 

あらすじ

広告代理店勤務42歳、隼人。いわゆるエリート。優良物件。
妻は元派遣社員・遊び相手の1人だったはずの千鶴子。
かわいい優秀で聡明な一人娘・七海。

エリート街道を走る隼人の両親は離婚しており、その母が入院している病院へ向かう隼人。そこでは姉の苑子がまたチクチクと隼人へ嫌味をぶつけるのだった。

 

以下ネタバレ込感想。

 

七海ちゃんが、ひたすら可愛いですよね。
聡明。その言葉通り、聡い。
きっと隼人の女遊びも、家族や周囲を監視する母親にもすべて気づいている。
それでなお、従兄の勉強を見てあげるほど、清い。

 

さて、私はこの2つの家族に足りないものは「愛」だと思います。

まず最初に、隼人と苑子の家庭が壊れた。
父の浮気により、両親が離婚し「自分をバカにする男からの金は受け取らない」という確固たる意志の元、母は家を出て、苑子はそれについていった。
隼人は父の元に残り、不倫相手がさっさと後妻に収まった居心地の悪い家で、何とか高校卒業まで耐えたようです。

 

この時、母の心はもちろん、苑子も、隼人も「愛されなかった」「選ばれなかった」と言う喪失感でいっぱいになってしまったのだと思います。

苑子は泣き叫び、隼人は呆然とした。

 

苑子と母親はそれでも母娘として家族のつながりを持ち、喧嘩はしつつも家族として母の介護を引き受けます。そこには愛がある。

母が苑子には冷たく言い放ったり、喧嘩をするのも家族愛があるから。

 

隼人はお客さん。
父のいる実家でも、母のいる家でも、お客さん。

 

隼人の帰る場所はなくなってしまいました
母や苑子が手を差し伸べれば良かったのだけれど――金銭的に裕福ではなかったから、きっと、そんな余裕はどこにもなかった。
しかも隼人は優秀だったし、きっと現実でも、後回しにしちゃうかもしれません。

 

そして42歳になった隼人は、歪んだまま中年になってしまった。

千鶴子はきっと自分に自信がないだけで愛を知っている人。だから七海を愛している。

七海も母と、父である隼人が大好き。

 

でも、隼人は――自分しか好きじゃないように見えました。

 

外に愛人を何人も作り、妻を蔑ろにしてバカにして、七海にそれを気づかせた。やっていることは隼人の父親と変わらない。

 

隼人は、病院への道で七海に「母さんみたいにはなるなよ」と言いました。

もうこれが、結末への決定打だったのかなと。

この言葉だけで「あぁお父さんはお母さんを愛していないんだ」と言うのがハッキリ見てとれるから。ひどい父親。

 

負の連鎖はどこまで続くのだろう

 

隼人に必要なのは家族からの愛だと思う。

「愛されてないから、手探りにその時その時、一瞬だけ埋めようとする。そして寂しくなる。どんどん孤独になる」この連鎖に陥り、そして周りを不幸にします。

 

余談ですが私の親友もこのタイプで、私は彼女から離れざるを得ませんでした。

彼女を愛する一人の男性より、彼女を心配する一人の親友より、彼女は多数のその場限りの温もりを求める人だから――。

 

でも彼女も本当は、家族からの愛情が欲しいんです。

自分たち家族を捨てた父親への寂しさ、そして家を出てすっかり違う家の妻・母になった自分の母親からの愛情が欲しくて仕方がない

 

隼人も、きっとそれを理解して、歩み寄り、涙を流すことができたら。

父親と母親が離婚した時に戻って、涙を流せたらきっと変わるんだろうな。

 

でも話の展開上、千鶴子と七海はきっと隼人に見切りをつけてしまったし、苑子からのSOSも隼人は拾えなかった。

 

親友も、私からの真っすぐな言葉を受け止めきれずはぐらかし、彼氏の愛もはぐらかして、今は1人で病気と闘っています。手を差し伸べようかとも思ったけど、私も傷ついてしまうのでやめました。今は親友ではなく、ただの友達。

 

七海はどうなるんだろう。

千鶴子が自分で立とう、と苑子みたいに吹っ切れたら二人は苑子と母みたいになれるかもしれないな。うん、七海にはまだ希望がある。

 

 

 

―――ただの感想になっちゃいました!笑

でもどのお話も考えさせられる素敵な短編が詰まってますのでオススメ。